撮る映画撮る映画、世界の映画祭を席巻する才能
ヨルゴス・ランティモス監督
エマ・ストーンを主演に迎えた最新作
『哀れなるものたち』
この作品でもその独自の美学と寓意に満ちた世界を作り上げていて、
その唯一無二の世界はまさに圧巻でした!
アカデミー賞でも4冠を達成し、その評価は高まるばかりのこの作品、
一体何がどれだけすごいのか、その見どころなどをご紹介したいと思います!
『哀れなるものたち』ヨルゴス・ランティモス監督の作り出す、美しくも哀れな世界!
さてそれでは、そんな映画界の注目する才能
ヨルゴス・ランティモス監督
エマ・ストーンを主演に迎えた最新作
『哀れなるものたち』
この映画は、天才外科医の手によって、胎児の脳を移植された女性が新しく世界を発見するというストーリー。
公開されてさっそく劇場で鑑賞してきましたが、
独自の美的世界を誇る映像、音楽、セット美術、衣装、全てが丹念に作り込まれたアート作品のような映画で、
最初から最後まで度肝を抜かれっぱなしの約2時間半でした!
「こんな映画これまで見たことがない」というレベルの、この世でランティモス監督しか作れない独創的な世界!
完全に圧倒されてしまったので、何度も劇場に通って見続けてしまうくらい、
とにかく他ではこんな世界は見たことがないというくらいのものすごい作品でした!
『哀れなるものたち』のキャスト
それでは、そんな凄まじい映画
『哀れなるものたち』
を作り上げた、豪華なキャスト陣をご紹介します!
エマ・ストーン
この映画で、胎児の脳を移植された主人公のベラを演じたのは
エマ・ストーン
ランティモス作品には『女王陛下のお気に入り』に続いての登板です。
この『女王陛下のお気に入り』の演技でも高い評価を受けたエマ・ストーンですが、
この映画では体は大人の女性なのに脳は幼児、という主人公に扮して、
映画のなかでベラの脳が成長していく様子を見事に表現!
その演技は高く評価されて
ゴールデングローブ賞、アカデミー賞を制しました!
ウィレム・デフォー
そして、そんなベラに脳移植をした天才外科医ゴドウィン・バクスター博士を演じたのは、
多くの作品でおなじみの名優
ウィレム・デフォー
この「ゴッド」と呼ばれるバクスター博士には、フランケンシュタインを思わせるような特殊メイクが施されていて、
演技をしながらちゃんと動かせるのはほぼ目だけ、という状態で、複雑な感情を表現してくれました!
登場シーンはさすがの存在感で、映画自体のレベルを底上げしてくれましたよ!
マーク・ラファロ
そして、
何も知らないベラをロンドンのバクスター博士のもとから世界へと連れ出していく
女癖の悪い弁護士ダンカン・ウェダバーン役は
MCUなどでおなじみの人気俳優
マーク・ラファロ
が演じました!
女好きでギャンブル好きという、弁護士なのに享楽的な性格で、
しかもベラに振り回されてだんだんと人格崩壊していく様子は、
なんだか見ていておかしくて憎めないキャラクターを作り上げてくれていました!
その演技は高く評価されて、アカデミー賞助演男優賞にもノミネートされています!
そのほか、
ゴドウィン・バクスター博士の助手で、ベラに思いを寄せるマックス・マッキャンドルス役に
ラミー・ユセフ
ベラが脳移植を受ける前のヴィクトリアと結婚していたアルフィー・ブレシントン役で
クリストファー・アボット
などが出演しています。
『哀れなるものたち』のスタッフ
それでは、この映画
『哀れなるものたち』
を作り上げたスタッフもここからご紹介していきますね!
まずこの映画を監督したのは、
ギリシャ出身の映画界の「奇才」と呼ばれる才能
ヨルゴス・ランティモス監督
その独自の映像美と、寓話のような多くのメタファーが込められたストーリー運びは高く評価されていて、
とにかく撮る映画撮る映画、全部何かしらの大きな賞をかっさらっていく印象です。
英語圏に進出した
『ロブスター』
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』
でも賞を積み重ねて
前作の『女王陛下のお気に入り』からはハリウッドの評価も高まってきていて、主演のオリヴィア・コールマンもオスカー受賞。
そして満を持しての今作では、ヴェネツィア映画祭で金獅子賞、ゴールデングローブ賞2冠、アカデミー賞4冠と、
各賞を席巻しました!
そんな作品が実現したのは、もはや「ランティモス組」と呼ぶにふさわしい、一流のスタッフが揃ってこそのことでもあって、
アカデミー賞でもノミネート11部門のうち、7部門はスタッフチームからです。
- 脚色賞 トニー・マクナマラ
- 撮影賞 ロビー・ライアン
- 編集賞 ヨルゴス・モブロプサリディス
- 衣裳デザイン賞 ホリー・ワディントン
- メイクアップ&ヘアスタイリング賞 ナディア・ステーシー、マーク・クーリエ、ジョシュ・ウェストン
- 作曲賞 イェルスキン・フェンドリックス
- 美術賞 ショーナ・ヒース/ ジェームズ・プライス
このうち、衣装 / メイクアップ&ヘアスタイリング / 美術 の3部門受賞という快挙!
この作品にどれだけ優秀なスタッフが集まってくれているかが良く分かりますね!
これもランティモス作品への映画界全体での評価の高さによるものだと思われます!
『哀れなるものたち』のあらすじ
それではここから、この映画
『哀れなるものたち』
のあらすじを簡単にご紹介していきますね。
この映画の原作は、アラスター・グレイの同名の小説です。
天才外科医であるゴドウィン・バクスター博士は、身投げした若い女性の遺体に、胎児の脳を移植して蘇生させることに成功。
女性をベラと名付けて、その体の中の脳の成長を見守っていました。
そして助手のマックス・マッキャンドルスと結婚させ、ずっと手元に置いておくつもりでしたが、
女たらしの弁護士ダンカン・ウェダバーンがベラの前に現れ、世界へと連れ出して行ってしまいます。
初めて外の世界を見たベラは、この世界のいろいろなこと、人間のことなどを、少しずつ学んでいくことになるのですが・・・
というストーリー。
ずっと親代わりのバクスター博士に守られていたベラが、
自分の足で世界を発見して、一個の人間として成長していく姿がこの映画のストーリーのメインになっています。
『哀れなるものたち』の見どころ
さてそれでは、
『哀れなるものたち』
この映画を見て個人的に見どころだと思ったところをご紹介していきますね!
大きなネタバレは避けるつもりですが、まだ映画を見ていない方でできるだけ新鮮な状態で映画を見たい方は、
以下は映画本編を見てからぜひご覧くださいね!
一流の美術作品を見ているような、圧倒的世界観!
まずこの映画で最初から圧倒されたのは、
まるで一流の美術作品を見ているような圧巻のヴィジュアル!
まず一番最初に目に入るのは、
細部まで作り込まれたセット!
これは、ブタペストの巨大スタジオで実際に建てて作ったのだとか。
ベラが住んでいるゴッド・バクスター邸も、
ベラとダンカンが出かけていくリスボンやアレキサンドリア、パリといった街角も、
すべて美術デザイナーのショーナ・ヒースさんとジェームズ・プライスさんの作り上げたもの。
空中を進むトラム、どこにも続いていない階段など
実在の地名は使っていても、実は世界のどこにもない不思議な世界を作り上げていて、
その世界を見ているだけでも時間を忘れて夢中になってしまいます!
そして、ベラをはじめキャストが着ている
ホリー・ワディントンさんによる不思議な造形美を誇る美しい衣装の数々!
他のどこでも見たことが無いような、一体どうやってその形に作ったのかよく分からない衣装たちの素晴らしさに、
思わず演技そっちのけで見入ってしまいました!
造形だけじゃなくて、生地もこの時代になかったビニールなどを使っていたりして、とにかく驚きの連続です!
そして強烈だったのは、
ロビー・ライアンさんの撮影した美しい映像の数々!
魚眼レンズを多用したり、わざと歪ませていたり、変わったアングルだったり、と、カットごとに細かく映像が切り替えられていって、
とにかく手がこんでいます!
これだけの多様な撮影方法を一つの映画の中で使うって、撮る方も大変だし編集作業もものすごく大変だと思うので、
これを作り上げたスタッフの熱意に敬服します!
カットごとにレンズもカメラも切り替えて、セッティングして・・・
って想像するだけでも大変ですよね。
これだけのバリエーションを持った映像を全部撮影していくのは並大抵のことではないと思うのですが、
そういうところに一つも手を抜かないというのが、一流の作品としてのクオリティーの秘密なのでしょうね。
この作品は、ストーリーそっちのけで一つの美術作品として鑑賞するのも一つの楽しみ方かと思えますよ。
そしてさらに、この映画を語る上では欠かせないのが、
イェルスキン・フェンドリックスさんによる、ちょっと変わった奇妙な音楽!
不協和音と中間音で構成された、ゆらゆらとした不安定な旋律の連続で、
これも今までほかで聞いたことのないような音楽!
いったいどうやってこんな音楽を作り上げたのか見当もつきませんが、
それがこの映画の世界観と絶妙にあっていて、
そうだ、映画って「総合芸術」だったんだよね、と改めて気付かされます。
美術もセットも衣装もメイクも音楽も、全てが合わさって、一つの映画芸術を作り上げているんですよね。
そんなことを改めて実感させてくれる、「総合芸術」としての映画の魅力を存分に発揮している作品だと思います!
『哀れなるものたち』のサウンドトラックも聴いてみてくださいね!
寓意に満ちた美しい世界
そしてこの映画を見ていると、
表面的な人物の動きやセリフなどで作り上げられている物語に加えて、
そこに込められた様々な寓意的なメタファーの世界
があることに気付かされます。
ランティモス作品は鋭い人間観察や痛烈な社会風刺が込められていることで知られています。
初期作の
『籠の中の乙女』
では、一つの閉鎖的な家族の物語なのですが、
閉鎖的な社会のあり方や、思想統制、人間の自由や尊厳など、
様々な寓意が込められている物語として作り上げられていました。
その点は、この
『哀れなるものたち』
でも同じように、映画を見ていると様々な寓意が込められていることに気が付かされます。
ですので、この映画では、表側としては一人の女性が社会に触れて、成長と発展をしていく物語ですが、
その裏には、人間社会の発展や、人間の成長とは何か、といった深い意味もメタファーとして込められているように思えます。
特に、閉鎖的な家の中で過ごしたベラが自由を求めて旅立つところは、
人間の自由や、意志、独立性とは何か、ということも考えさせられて、
そして現代社会ではしばしばそれが侵害されていることへの風刺にも思えます。
さらに言えば、食欲や性欲に貪欲な、ベラというキャラクターにカリカチュアライズされていた、
常に欲望に振り回される人間という生き物への風刺。
映画の中では、船の中でベラがマーサとハリーという人たちに出会って、エマーソンやゲーテの思想にも触れて、
自分の考えを発展させていっている場面が描かれていますが、
そこから考えるとこの映画では人間の思索の歴史や、人類の発展についても、意味がが込められているように感じられます。
また、ベラが娼館で働くことや、支配的な夫に苦しんでいた過去から、
「その体は一体だれのものか?」という、身体の所有性についても考えさせられることになるのです。
そんなふうに、この映画はベラという一人の女性の物語だけじゃなくて、
いろんな深いメタファーがたくさん込められていると思うので、
映画を見ながら謎解きのように、ランティモス監督の仕掛けた意味を紐解いていくのが1番の見どころのように思えます。
美しい芸術作品のような映像作品に込められた、メタファーの世界を楽しんでみてくださいね!
『哀れなるものたち』ぜひ一度は見てほしい独創的世界!
ということで、
映画界で注目の才能
ヨルゴス・ランティモス監督
エマ・ストーンを主演に迎えた最新作
『哀れなるものたち』
を観たのですが、
この映画でもランティモス監督独自の美学と寓意に満ちた世界を作り上げていて、
その唯一無二の世界はまさに圧巻でした!
独自の美術デザイン、音楽、撮影方式を駆使して作り上げた独創的世界は、
世界でただ一人ランティモス監督にしか作り上げることのできない世界!
見ているこちらも完全に度肝を抜かれて、圧倒されてしまいました!
この作品は「映画芸術」に確実に新しい1ページを加えたと思いますので、
まだ見ていない方はぜひ一度は目撃してみてくださいね!
この映画『哀れなるものたち』は現在、DVD&ブルーレイ、各種動画配信サービスで見ることができます!